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文教PTー夏の視察⑥ (vol.200)

2012/08/27 ブログ by 安川有里


文教PTの夏の視察の最終日は、5ヶ所。
馬車道の「県立歴史博物館」、紅葉坂の「県立図書館」、横浜給与事務所、学校事務センター、そして、最後は葉山の県立近代美術館を調査しました。

開館時間前にお邪魔したのは「県立歴史博物館」。

昭和42年3月に、県立博物館としてオープンしました。
平成7年に、自然系と文科系の展示を再編整備。
自然系は、箱根の「生命の星・地球博物館」に、
馬車道の方は、文化と歴史をテーマとする「歴史博物館」になりました。

(「神奈川県立歴史博物館」の建物は、日露戦争が始まった1904年に横浜正金銀行の本店として建てられたものです。1923年の関東大震災では、1階から3階までの内装と屋上のドームが消失しましたが、建物本体は地震の揺れに耐えました。)


(屋上のドーム)

(ドームの中)

(屋上から見た馬車道、建築当時は一番高い建物でした)

博物館は、神奈川の歴史を5つのテーマにより展示を展開しています。

テーマ①相模の古代に生きた人びと
展示では原始・古代(旧石器時代〜平安時代)の人びとの生活の様相を
県内各地からの出土品などで紹介。

テーマ②都市鎌倉と中世びと
鎌倉幕府の集まりから、小田原を拠点に関東一円の支配を目指した
後北条氏の滅亡までのおよそ400年間の資料を展示しています。

テーマ③近世の街道と庶民文化
北部に甲州街道、南部に東海道が通っていた近世の神奈川県域。
とくに幹線路である東海道には、城下町・宿場・関所など、街道の
周辺には名所・旧跡・湯治場などがありました。
展示では、多様な地域性と、江戸の暮らしを支えた物産など、近世
神奈川の特色を紹介しています。

テーマ④横浜開港と近代化
ペリー来航、世界に開かれた港・横浜。
文明開化、自由民権運動、様々な近代産業の発達の資料を展示。
横浜正金銀行本店に関する資料も展示されています。

テーマ⑤現代の神奈川と伝統文化
関東大震災、昭和恐慌、15年戦争、戦後復興、高度成長期……
神奈川県の変化の様子を県民生活の視点から展示。
伝統文化も紹介しています。

人びとの日常生活や信仰、政治や経済の変化、外来文化の影響など、さまざまな角度から神奈川のアイデンティティを探ろうとした、特色ある展示になっている、と感じました。

特別展示は、「文化の交流と変容」をテーマとした調査研究事業と連携した展示で、年間3~4回開催。
私が訪れた8/24は『ペリーの顔・貌・カオー「黒船」の使者の虚像と実像ー』を開催していまし
た。

(この展示は、8/26まで。次回は10/6から『再発見!鎌倉の中世』です。)

博物館は、展示だけでなく、
調査研究、教育普及、学校連携、子供向け事業、資料の収集と保存など、さまざまな活動を行っています。
神奈川県立高校の日本史必修も見据えての学校連携を行い、インターンシップも受け入れていま
す。調査した日も、高校生の皆さんが、学芸員の方に博物館の仕事を教わっているところでした。

平成23年度の入館者は14万人。25年度には、16万人を目標に、「より親しまれ、又来たくなるような博物館の実現を目指す」と館長の薄井さん。
歴史大好きの私、「調査ではなく、ゆっくり見に来ます」と約束して歴史博物館を後にしました。


(さすが、元銀行。大切な収蔵品は、昔の金庫へ)

2カ所目は紅葉坂にある「県立図書館」。
前日に調査した「県立川崎図書館」は自然科学に特化した図書館でしたが、
こちらの「県立図書館」は、社会・人文系の調査研究型の図書館であり、県内図書館のネットワークの中心になっています。

設立は昭和29年(1954年)。隣の音楽堂とともに、戦後モダニズム建築の旗手と言われた故・前川國男さんの設計で建てられました。

本館1階と2階は一般閲覧室。人文系(哲学・歴史・芸術・文学)の資料、社会・経済・ビジネス系の資料が揃っています。

視聴覚資料室は、新館1階。
クラシックとジャズを中心に、CD・レコード・DVDなどの視聴覚資料と、音楽関係の図書や雑誌が揃っています。
貸出は、3週間で、本なら10冊まで、視聴覚資料は、6点までとなっています。
この他、調査相談室、新聞・雑誌室、かながわ資料室があり、人文・社会系の資料を調べたい時は、とにかく頼りになる図書館です。


(ネットワーク図書館としての機能もあります。ここから、県下の図書館へ本が送られたり返って来たり)

ベストセラーズ文庫や、雑誌創刊号コレクション、戦時文庫や「解体新書」などの貴重な書物も所蔵されています。
展示や県民公開講座も開かれ、県民に愛される図書館を目指しています。

3カ所目は、教育局の「横浜給与事務所」。
横浜市の教員を対象とした給与事務を一手に担っている事務所です。
4カ所目は、シルクセンターの中にある「学校事務センター」。

県立高校と中等教育学校の教員の庶務事務(給与・報酬・旅費)を集中処理しています。
この2カ所は、複雑な手続き必要な非常勤教師と臨任教師の庶務事務をスリム化し、旅費支給事務を安定執行する効果をあげています。

夏の視察、最後は葉山町へ。
「神奈川県立近代美術館・葉山」。
神奈川県立近代美術館は、昭和26年(1951年)に鎌倉の鶴岡八幡宮境内に、日本で最初の公立近代美術館として開館しました。
『戦後復興の旗印。一流の文化に触れること」そう判断した当時の知事が、国立近代美術館ができる前に建てられました。
屋外の自然を取り入れた坂倉準三設計の鎌倉館は、近代建築の傑作としても知られています。
充実して来た所蔵品のために、収蔵庫と所蔵品展示のスペースを考えて昭和59年(1984年)、鎌倉館から300メートルほど北鎌倉に寄ったところに鎌倉別館を建設。

平成15年(2003年)に開館した葉山館は、広い展示スペースの他、美術図書室や講堂などの施設を備えています。
この3館からなる「神奈川県立近代美術館』は、調査・研究に加えて、普及・教育にも貢献する美術館活動を行っています。

訪ねた日は、雲一つない青空。

この美術館は、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)事業で運営されています。
美術館でPFIを行っているところは珍しいそうです。
(館の運営費・建物の分割費は年間4億6千万円・30年間です。)

8/4〜10/21の展示は「ビーズインアフリカ」
人類の歴史とともに世界各地で生まれたビーズ装飾。
日本では初めての本格的なビーズ展で、アフリカのビーズに焦点を当てています。
国立民俗学博物館の全面協力で、世界的なコレクションから200点を精選。
ビーズが私たち人類の歴史、社会、文化にいかに深く関わってきたかを紹介している、興味深い展示になっています。
ビーズの玉を一粒一粒つないだ人の気持ちに想いを馳せながら見せていただきました。


(熱心に作品を観察する小林大介議員)

そして、先日からはじまった「アントニオ・ゴームリー彫刻プロジェクトIN葉山 TWO TIMES ーふたつの時間」。(来年の3月までの期間限定プロジェクトです。)
イギリスを代表する世界的な彫刻家アントニー・ゴームリーの彫刻作品が、葉山の海と山と対話する……
一色海岸に臨む美術館の庭から、遠く太平洋を静かに遠望し、


(季節によって、お天気によって、海の表情が変わります)

美術館の屋上から三ヶ岡の稜線と空を遥かに眺める、彫像。

2体の彫像、
悠久の時間を感じさせます。

葉山の海と山が作品の一部。この美術館だからこそ完成した作品と言えるかもしれません。

収蔵庫と所蔵品も見せていただきました。川端康成氏の寄贈作品をはじめ、収蔵品の多くが、寄贈であることに驚きました。
鎌倉・葉山という土地柄もあるのかもしれませんが、いいものは、後世に伝えたいという、寄贈される方々の気持ち、そして、その心をしっかりと受け止め、我が子のように慈しんでいる職員の方の気持ちが伝わってくる収蔵庫でした。

海に恋した美術館という神奈川県立近代美術館 葉山のパンフレットの言葉です。
『ひとが生きている限り、歴史は刻まれ創造も生まれます。アートという、人間の歴史と創造の遺産を受け継いで伝えていくこと、海に恋した美術館の大切な使命のひとつです。』


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