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かながわアートホール(Vol.437)

2014/08/31 ブログ by 安川有里


 県民企業常任委員会関連の県の施設の「おひとりさま視察」、4日目(8/27)、一か所目は「かながわアートホール」です。

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(県立保土ヶ谷公園の案内図)

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(公園の真ん中に、アートホールがあります)

 県立保土ヶ谷公園の中にある「かながわアートホール」は、1992年に開館し今年で22年目を迎えます。最大300人収容のホールの他、練習用のスタジオ(第1〜第5)、音楽資料を閲覧・視聴できる情報コーナー、見学ギャラリー、レストラン、展示コーナー等があります。

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(ホワイエから受付と音楽情報コーナーを、パチリ!!)

 ホールの舞台部分は前後3分割の昇降式で、可動式の客席を後退・収納することにより完全にフラットな空間とすることが可能です。(音楽専用ホールとして設計されています)。

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(ホール。神奈川フィルハーモニーオーケストラがリハーサル中だったので、パンフレットから接写)

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 開館時には神奈川フィルハーモニー管弦楽団の事務局が置かれていたことから(後に横浜市中区に移転)、現在もホールを楽団練習場として使用しています。年に数回開催される「カジュアルコンサート」等により地域との交流を図っています。
 一般貸出しが行われていて、貸し出しの利用率は約90%、ホールは各種発表会やコンサート等にも幅広く利用され、5つのスタジオは、個人や小編成バンドの楽器練習や合唱練習などに利用されています。第1スタジオは、観客50人程度の小規模なコンサートを開催することが出来ます。

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(第3スタジオ)

 このホールならではの「見学ギャラリー」では、関係者以外、通常は目にすることができないプロオーケストラの練習風景を「ガラス越し」で無料で自由に見学することができます。私も、受付でヘッドホンを貸りて、臨場感あふれるリハーサル風景を見学させていただきました。

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(見学ギャラリー、内部の写真)

この日は、8/29の第301回定期演奏会のリハーサル中でした。

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(リハーサル開始前に、予定を書いたボードを、許可を得て撮影させて頂きました)
(301定期演奏会:グラズノフ/バレエ音楽「四季」、チャイコフスキー/交響曲第6番 ロ短調Op.74「悲愴」)

 指揮の小泉和裕さんと、団員の皆さんとの、作品にむける情熱が伝わってくるリハーサルでした。15〜6人の方が熱心に見学されていました。クラシックファンにとっては、素敵な空間の一つと言えます。

 この他、さきほどご紹介した「カジュアルコンサート」、近隣の皆さんに様々なジャンルの芸術に触れてもらえるよう企画された「CD/DVDコンサート」、地元の中学・高校の吹奏楽部が参加するキッズコンサートなどの事業も展開しています。

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 ところで、かながわアートホールは、開館当時から神奈川芸術文化財団が運営し、指定管理者制度導入後も、引き続き同財団が指定管理者をつとめていました。来年3月に指定期間が満了を迎えるため、県は1月から指定管理者の募集を開始しました。民間企業の共同事業体と「公益財団法人神奈川フィルハーモニー管弦楽団グループ」の2団体が応募し、有識者による外部評価委員の審査などを経て、神奈川フィルハーモニーグループの指定が決まりました。期間は、2015年4月1日から2020年3月31日までの5年間、県からの指定管理料は年間約1億円です。
 このことが、県議会の議題になったとき、正直に言って「?」、と感じました。つい、一年前まで債務超過解消に苦労していた神奈川フィル(*)に、新しい業務も加わる指定管理が務まるのか?しかし、指定管理を請け負うのが「グループ」で、そのパートナーが広告代理店の横浜アーティストであること、それが、不安解消の一因と、一応納得しました。同社は、私が、テレビ神奈川・ラジオ日本と番組を担当していた時にイベントなどで一緒に仕事をさせていただいたことがある代理店でした。あれから、30年近く、規模は小さいものの地域に密着した業績を残していらっしゃいます。
 これまで、アートホールの運営を担当してきた神奈川芸術文化財団の実施事業や活動に、同グループが新しい感覚を吹き込むことで、「新生かながわアートホール」が、もっと県民に愛される施設になるよう期待しています。

☆   ☆   ☆
(*)神奈川フィルハーモニーの債務超過〜公益財団法人に至るまでの経過:神奈川新聞などの記事まとめました。参考まで。
 
 神奈川フィルは人件費の圧迫増などで約3億円の債務超過に陥っていた。その上、2008年の公益法人制度改革で、13年11月末までに公益法人に移行申請できなければ税制の優遇を受けられず、存続が危ぶまれる状況でした。法人移行の条件は、純資産300万円の保有。債務超過の解消が、法人認定への絶対条件でした。
 この窮状に11年2月、県や横浜市、県内財界などは協力して日本初となる官民一体のマッチング方式による寄付制度「ブルーダル基金」を設立。精力的に寄付を募った結果、13年7月には債務超過を解消できる見通しとなり、翌8月に県に法人申請をした。現在までに集まった基金は、4億6千万円に上るります。
 神奈川フィルハーモニー管弦楽団の存続問題で県は2014年3月19日、同楽団を公益財団法人に認定しまた。法人化を目指して官民から広く寄付を募り、財政再建を進めた同オーケストラの存続が、正式に決まり、4月1日から、新体制でスタートを切りました。
 神奈川フィルハーモニー管弦楽団は「不可能」ともいわれていた債務超過の解消を実現し、公益財団法人に移行することができました。最大の要因は、ブルーダル基金で官民の幅広い協力を得られたことにあります。寄付文化があまり根付いていない日本のクラシック業界において「きわめて異例」(日本オーケストラ連盟)な出来事といえます。
 強い「地元力」が集結された理由には、楽団の変化があるといわれています。この間、楽団員の給与カットなどによる慢性的な赤字経営からの脱却に加え、聴衆との積極的な交流など、楽団員の意識改革を進めてきました。
 だが、前途は決して明るくありません。2期連続で純資産が300万円を切れば、法人格を取り消されます。楽団は今後も、定期会員を増やすなど経営的な自立をさらに進めつつ、ブルーダル基金で培ったネットワークを生かして寄付を募り続ける必要があります。


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